この作品に流れる”親密さと仄暗さ”は前向きでいることやエモーショナルであることが正義と近しい言葉で語られる暮らしのなかで何よりも心を明るく照らしてくれている。特にKAが参加したエチオピアン・ジャズサンプルの 「In Good Hands」 から Chet Baker のようなジャズ・ヴォーカル曲 「ode2mylove」 の2曲を含む終盤4曲に流れるメランコリックなムード、それこそがこの作品の一番の魅力であるに違いない。
Louis Wayne Moody High / V.A. [ Numero Group ] 2020.04
シカゴの超優良再発レーベル”Numero Group”からまたしても素晴らしいコンピレーションがリリース。『Louis Wayne Moody High』-架空のハイスクール「ルイ・ウェイン・ムーディ高校」の失われた1967年卒業年鑑をテーマに10代の失恋や夏の思い出が歌われるやせるなくも淡い哀愁を帯びたティーン・ガレージが14曲収録。
そして今回リリースされる『Louis Wayne Moody High』はそんな黄昏ていて悲観的で物憂いなガレージ・ソングを14曲収録したコンピレーション・アルバム。ほとんどのアーティストがシングルのみを残した超マイナー・バンド。『Shutdown 66』『Teenage Shutdown vol.3』など過去にもトワイライト・ガレージの聖典ともいうべき作品はありましたが今作も同様に語られるべき素晴らしい内容。
The Rising Stormの再発も手掛けたArf! Arf!からリリースのコンピ「NO NO NO」にも収録の未練たらたらの失恋ガレージThe Invaders”I Was a Fool”、インディアナのガールズ・グル―プThe ShadesによるShangri-Lasライクな”Tell Me Not To Hurt”、13th Floor Elevatersで知られるTexasの名門レーベルInternational ArtistsからシングルもリリースしているThe Chaynsによるフォーキー・ガレージ”See it Though”、夏の終わり系メロディのソフト・サイケデリアThe Frost”Behind the Closed Doors of Her Mind” 、そして最後に収録されているThe Shy-Guysの”Goodbye to You”は数年前にYou Tubeで発見して以来、個人的Wantだった1枚で最高のバンド名とSummer Sounds級の完璧なルックス、謎のリヴァーヴがかかったスネアとじめっとしたオルガンがトワイライト好きのハートを射止めるナイスな1曲。
Arthur Russell『World of Echo』やLalaajiを想起させる ヴィブラフォン入りの甘美なアンビエント・トラック「Reflex」、インダストリアルなビートと深いリヴァーブのサックスによるリンチ的世界「The Runner」、先行曲としてリリースされた「L.M.G.D」はLounge RizardsやGrayあたりを連想させるコールドファンクでかなり格好いい。本作のハイライトとなる「When I Close My Eyes」はPeter Zummoが参加したSuicideの未発表曲といわれても疑わない漆黒のダーク・ロカビリーで裸のラリーズを引用したDirty Beachesの傑作『Badlands』に匹敵する闇の深さと空虚さがある。