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FYOC Favorites 2022

今年もFYOCに関わってくれたみんなのフェイバリットを集めました。今回はひとまず音楽編。まぁ本当にいろいろありますけど相変わらずイケてる新譜やまだ聴いたことない復刻ものなんかを探してる時間やそれを聴いてる時間はなにより有意義です。死ぬまでどのくらいの音楽に出会えるか分かりませんが一枚でも多くの素敵なレコードに出会えますように。最近はほんと素直にそう思います。

アメリカ、イギリス、スペイン、ベルギー、ドイツ、オーストラリア、日本…世界中の音楽家達のニューリリースから知られざるマイナーガレージ復刻盤、偉大なプロデューサーの宅録発掘音源に海賊ラジオのミックステープなどなど2022年FYOCのお気に入りです。それでは年末年始の暇時間にでもぜひ。

“やりきれないことばっかりだから、レコード、レコード、レコード、レコード、レコード、レコード、レコード、レコード、レコード、レコード、レコード、レコード、レコードを聴いている、今日も” ECD「DIRECT DRIVE」

Naomie Klaus / A Story Of A Global Disease

昨年末にフランスのレーベルBamboo ShowsからカセットでリリースされていたベルギーのプロデューサーNaomie Klausによる1stアルバムをスペインのエクスペリメンタル系レーベルAbstrakceがアナログリリース。ダビーなレフトフィールド・ポップにゆるいラップが乗る「Tourism Workers (Arrival)」などはLeslie Winerに通ずるところも。

Lucrecia Dalt / ¡Ay!

コロムビア出身で今はベルリンで活動するエレクトロニック・アーティスト。夢の中を彷徨う幽幻なサウンドテクスチャーとラテンのリズム、Don the Tiger 「Matanzas」の隣に置きたい独創的なモダン・エキゾチカ。南米で撮られた2022年映画『メモリア』における記憶の旅路のサウンドトラック、もしくは架空の街に想いを馳せるスリープウォーカーの頭の中、エレクトロニクスとフォークロアのこれ以上ない完璧な融合。

Act Now / Louis Adonis/Wow Factor

メルボルンのポストパンク・バンドTotal CountrolのJames VinciguerraとF INGERSなどの活動でしられるエレクトロニクス・アーティストTarquin Manekによるコラボシングル。ダビーなリズム・プロダクションにフリー・フォームなクラリネットをフィーチャーした遊び心溢れるミュータント・テクノ・ダブ。ジャングルっぽいリズムに流れ込むSide1もいいがBasic ChannelとJohn LurieがコラボしたみたいなSide2が至高。Yl Hooiをはじめオーストラリアのアンダーグラウンドはとても面白い。

MOBBS / Untitled

NTSのレギュラーも務めるサウスロンドンのDJ/プロデューサー、2017年以来のフルレングス。粗くざらついた質感のサウンドテクスチャーをベースに真っ暗な地下で鳴るインダストリアルなダンスホール、トラップ、ドリルなど14トラック。去年がSpace Africa「Honest Lobor」なら今年の気分は間違いなくこれ。ダンスホール・リディム集「Now Thing 2」のレーベル”Chrome”からのリリース。

IC-RED / GOODFUN

最高にSickな音を届ける詳細不明のラップデュオ、アムステルダムの”South of North”からリリースされたカセット作品。チカラの抜けたダルそうなラップとアブストラクトな電子音にポストパンク的DIYサウンド、Love JoysとThe Slitsが共演したみたいな奇跡の格好良さ。なんのルールにも囚われず鳴らされた音楽からしか聴こえないクールな佇まいに加えてひとつひとつの音選びには並外れたセンスが光る。

Jabu / Boiling  Wells(Demos 2019-22)

ブリストルのアーティスト・コレクティヴ Young Echoの3人組がひっそりとリリースしたデモ音源集。この作品で鳴らされるエコーまみれの甘美なトリップホップはこんな時代にもメランコリックでドリーミーな音楽が有効であることを教えてくれる。シンプルなドラムマシンに反響して溶け合うヴォーカルとシンセサイザー、現実に向き合うためにたまには音楽に逃避するのもいい。

V.A. / Ghost Riders

Rising StormからNora Guthrieまで収録した名作コンピ「Sky Girl」やオーストラリア現行エクスペリメンタル・ダブYl Hooiのアナログリリースなどで知られる”Efficient Space”からまたしても最高コンピレーション。トワイライトなフィーリングを軸に超マイナー・フォーク~ガレージを17曲、アートワークから曲順まで拘られた丁寧な作りに感動。夏の終わりのように儚く美しい、プリミティブな録音物からしか体験し得ないムードを忍ばせた素晴らしい1枚。ラスト3曲の流れはいつ聴いてもぐっときます。

Yosa Peit / Phyton

ドイツのシンガー、プロデューサーが2020年にリリースした1stアルバムをUKのインディーレーベルFireがDLコード付のホワイトカラー・ヴァイナル仕様でリイシュー。ジャンクでロウなブレイクビーツにNeneh Cherryを彷彿とさせる妖麗なボーカルが絡む「Anthy」は必聴。

Rosalia / Motomani

フラメンコ、レゲトン、バチャータ、R&B、ヒップホップ、、、、をアヴァンギャルドに折衷したエキセントリックな超ポップアルバム。サンプルにも使われたBurialをはじめ、Arthur Russellなんかの意外なとこまで古今東西ジャンルレスな影響元をぶち込んだ変態的センス炸裂のプレイリストと併せて聴くと楽しさ倍増。ミニマルなフレーズの反復と魔法のチャント「Chicken Teriyaki」,Frank Ocean風バラード「Hentai」など、こんなイカれた音楽が世界中で聴かれているなんて最高だしアートワークもやばい。

V.A. / Pause for the Cause : London Rave Adverts 1991-1996, Vol.1~2

世界各地に埋もれたオブスキュアな音源を発掘&リリースするロンドンのレーベルDeath Is Not The End。本作は、90年代にロンドンの海賊ラジオで流れていたアンダーグラウンドなレイヴパーティの告知CMをミックスした超マニアックな内容。当時のロンドンクラブミュージックシーンの熱気を追体験できる最高のドキュメント。

V.A. / Pure Wicked Tune: Rare Groove Blues Dances & House Parties, 1985-1992

Death Is Not The Endからもう一作。本作は、80年代中頃から90年代初頭にサウス~イースト・ロンドンの小規模なダンスパーティーでプレイされていたDIYなカセット音源をコンパイルしたミックステープ。ソウルやファンクなどのレアグルーヴをサンプリングし、サイレンやトーストを加えレゲエマナーに仕上げた独自のサウンドは、新たなジャンルの誕生を予感させるものだったが、90年代初頭のクラブ・ミュージックの台頭の中で埋もれてしまったそう。UKのサウンドシステムカルチャーの隠れた一面を窺い知れる貴重な音源集。

Dawuna / EP1

ブルックリンのシンガーDawuna、2021年「Glass Lit Dream」も良かったけどこの最新EPも相当やばい。鼓膜の内側にグッとくるくぐもった音質のインナー・ソウル・バラードを3トラック、前作からあったビートの実験性を残しながらもNearly Godの内省とD’Angeloの官能を同時に感じさせるようなメロディとボーカル、無二の存在感。

Slauson Malone / for Star(Crater Speak)

我らがSlauson Maloneの2022年ニューEP。各楽器が去勢されたように静かなアンサンブルを奏でるSmile #8 (Je3’s Eextendedd Megadance Version for Star)(see page 182) 、Loren Connorsまで想起させるダークなアンビエント・ノイズSsmmiillee ##55の2曲を収録。マッドな質感を残しながらもタイトル通りのスピリチュアルな展開に次作への期待も高まるばかり。

Beyonce / Rennaissance

先行シングル「BREAK MY SOUL」が出た時から興奮しっぱなしだったけどアルバム冒頭Kelman Duran参加&Tommy Wrght Ⅲサンプルの「IM THAT GIRL」でブチ上がり、「ARIEN SUPERSTAR」まで息継ぎ出来ませんでした、かっこよすぎ。Kendrick LamarのDuval Timothy参加の新作でも思ったけどアンダーグラウンドと結びつきながらも圧倒的な作家性と表現のスケール感を崩さないバランス感覚はさすがとしか。

quinn / quinn

Standing On The Corner、Slauson Maloneをフィバリットに挙げる17歳のラッパー/プロデューサー。絶妙な音の汚し方に脱臼したようなギター、変調したボイスサンプルのコラージュなどSOTCライクな要素は至るところに。しかし本作のハイライトは「been a minute」や「some shit like this」で聴けるロウなボーカルと内省的な胸をうつメロディにこそきっとある。

Babyfather , Tirzah / 1471

Dean Bluntの別名義Babyfather、Tirzahと DJ Escrowをフィーチャーしたニューソング。突然止まったり、つんのめったりするバグを起こしたワンループにTirzahのドリーミーなヴォーカルか乗るわずか104秒の素晴らしいUKソウル。Dean Blunt名義でリリースされたアコースティックな新曲「death drive freestyle」も要チェック、こっちは歌声が滲みる。

Quelle Chris / Deathfame

デトロイトのヒップホップ・プロデューサー/ラッパーによる7作目。「Feed The Heads」、「Cui Prodest」あたりの埃っぽいローファイなビートとダビーなサウンド・プロダクション、「King in Black」のスクリューされたトリップホップ、Sun Raのヴォーカル曲のようなピアノ小曲「How Could They Love Something Like Me?」など、いわゆるオルタナティブと形容されるヒップホップ作品にはやや食傷気味だった自分にも相当刺さった。Pink Siffu、Navy Blue参加。

Warm Currency /  Returns

シンプルであることはとても重要、例えばギターひとつとっても和音を鳴らすのか短音で弾くのかそれだけでも大きく違う。シドニーのデュオWarm Currencyのデビューアルバムで展開される極限まで削ぎ落とされた静謐なフォーク・ミュージックは生活音や自然音を効果的にコラージュしリスナーにあらゆる情景を浮かばせる。この研ぎ澄まされた静けさはKali Malone、もしくはMaxine Funkeやalastair galbraithのファンにも届くだろう。

Big Thief / Dragon New Warm Mountain I Believe in You

フォーク・ミュージックの歴史を無意識的に受け継いでいるかのような軽やかさとリアルな生活と地続きのサウンド。人間同士の繋がりがまだバンド・ミュージックにおいて魔法を起こし得るのだと教えてくれる真ん中に集まったミニマムなバンド・アンサンブル、それとは一転90年代初頭のニール・ヤングのようにハードなギターとレヴォン・ヘルムさながらのタイム感を持ったドラミングが印象的な来日公演も素晴らしかった。

Sam Esh / Jack Of Diamonds/Faro Goddamn

アメリカのアウトサイダー・ギタリストSam Eshの音源集、オリジナルは90年代にリリース2本のカセットテープ。とにかく乾ききったサウンドとあまりにプリミティブな演奏が衝撃的なストリート・ブルース。荒々しくかき鳴らされるワンコードの反復と独自の言語(?)のハウリングによる異形のミニマル・ミュージック。

Born Under A Rhyming Planet / Diagonals 

Plus 8 から90年代前半にシングルを数枚リリースしている Jamie Hodge による未発音源集。恥ずかながらはじめて存在を知りましたがもう最高の音しかつまっていないピュアでソウルフルな電子音楽、スウィングするドラムマシンによるジャズテクノ「Menthol」「Fate」「Hot Nachos with Cheese~」、微睡みのダウンテンポ「Siemansdamm」、繊細なリヴァーヴ処理とシンセが煌めくコズミックな「Handley」、エクスペリメンタルなビートとアンビエントな雰囲気を纏った「Intermission」など全曲最高。

Valentina Magaletti / A Queer Anthology of Drums

Al WottonとのHoly Tongueの新作も素晴らしかった打楽器奏者、デジタルオンリーだった2020年作がアナログリリース。ヴィブラフォンやトイピアノ、フィールド音を絡めながら打楽器のインプロヴィゼーションを展開する密林的エクスペリメンタル・パーカッション作品。呪術的な反復はときにMoondogやCanまで想起させる、いま一番刺激的なサウンドを届けてくれるパーカッショニスト。

CHIYORI × YAMAAN / Mystic High

メンフィス・ラップとアンビエント、ありそうで意外となかった最高の組み合わせ。音の快楽性に加えてポップな歌メロもあって年始はこれと宇多田ヒカル「BADモード」、Cities Aviv「MAN PLAYS THE HORN」ばかりリピート。とりわけ本作のアンビエント的メロウネスとメンフィス・ラップ由来のチープな質感による気持ちよさは中毒的。

V.A. / SUBLIMINAL  BIG  ECHO

今年1番のサイケデリックな音盤!ジャパニーズ・アンダーグラウンド音楽家11組がDUBをテーマに持ち寄った脳みそトロける12トラック。Hair Stylisticsの超ドープなスロー・ダブからTOXOBAMへの流れがいつ聴いても最高。TOXOBAM「HOT GOTH」のリリースで知られる”SLIDE MOTION”から。

Hallelujahs / Eat Meat, Swear an Oath

ラリーズのオフィシャル・リリースは事件だったが日本のサイケデリック・ロックにおいてはこれも忘れちゃいけないはず、ハレルヤズ86年作実に25年ぶりのリイシュー。Galaxie 500をはじめとするスローなサイケデリック・ギターロックに先んじて鳴らされたいま聴いても新鮮な楽曲達。フィジカルでは手に入れづらい状態が続いていただけに嬉しい再発です。リリース元は日本のアンダーグラウンド音楽を多数リリースするアメリカのBlack  Editionsで来年はWhite Heaven 「Strange Bedfellow」のリイシューも予定されている。

Charles Stepney / Step on Step

シガゴの伝説的プロデューサー、アレンジャー、作曲家Charles Stepneyによる70年代宅録音源集。チープなヴィンテージ・リズムボックスとアナログシンセをメインにホーム・レコーディングならではの親密さを感じさせる23トラック。Angel Bat DawidやJeff Parkerなどをリリースするシガゴの名レーベルInternational Anthemのナイスワーク。

HiTech / Hitech

デトロイトの天才Omar Sの”FXHE”からリリースのゲットー・テクノ・デュオ。ハウス、トラップ、フットワークなど多彩なビートを操り夜の街をクルーズする洒脱なシティ・ミュージック。メロウなシンセもフィメール・ヴォーカルも絶妙にちゃらくならなくてそこが良い。これがきっと都会の音楽。

OMSB / Alone

think god以来、7年ぶりのフルレングス。2020年以降多くの人が考えただろう当たり前の大切さとかありふれた幸せ、不味いたこ焼きを食ったり暇持て余して公園行ったりする「One Room」の日常はそんな当たり前を特に美化するわけなく淡々と少しだけユーモラスに切り取っている。人それぞれの日常にそれぞれの孤独が転がっている、そんな当然のことを教えてくれる。

Whatever The Weather / Whatever The Weather

朝のしんとした空気には静謐なアンビエント”25℃”、ドリルンベースの“17℃”は帰りの電車で、寒くなってからはメランコリックなシンセ・トラック“10℃”が肌にあう。Loraine Jamesアンビエント名義のデビュー作はアーティスト名通り、温度や湿度を感じさせるようなエレクトロニック・ミュージックであらゆるシチュエーションで良く聴いた。渋谷CIRCUS公演も最高だった。

V.A. / To Illustrate

レゲトンにインスパイアされたクラブ・ミュージックやダウンテンポ、UKベースの変種などbpm100前後で展開される低いテンポの先鋭的エレクトロニック・ミュージックをwisdom teethがコンパイル。大阪のabentisによるアンビエントなフィールを持ったダンスホール「Bicycle」、同じモードのFactaとYushhの「Fairy Liquor」、韓国のsalamandaのメロウなダブ・ステップ「κρήνη της νύμφης」あたりが個人的には白眉。

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Forge Your Own Tapes vol.4
FYOC’s Exotica Feeling

最近エキゾってよく聞きますが正直しっくりこないものがほとんどじゃないですか。マーティン・デニー〜アーサー・ライマンなどを通過したいわゆるエキゾチカはいまや様々な文脈を経て新しいエキゾ感が生まれているように思います。ヨーロッパ各国のビートミュージックや先鋭的なジャズ作品なんかを聴いているとかつてあったエキゾシチズム=異国情緒的な感性とはまた違った新鮮なフィーリングを呼び起こさるように思うのです。ということで今回は唐突にFYOC的エキゾ特集、最近リリースのものからクラシックまで、2022年に聴くにもジャストな作品を選びました。記事中の楽曲プラスαのプレイリストは最下部に貼ってますのであわせてどうぞ。

Don the Tiger / Matanzas

Crammed Discs, 2018

バルセロナ出身、リディア・ランチやマーク・カニンガムとの共演経験もあるというギタリスト兼伊達男、Adrian De Alfonsoによるソロプロジェクト。Timmy  Thomas meets Serge Gainsbourg(友人談)、もしくは「Rain Dogs」のエレクトロニクス版とも言えそうな郷愁ラテンエキゾチカ。密室的な鳴りのビートとパーカッションが肝なのはもちろん、アンビエント的感覚も内包したシンセ〜エレクトロニクスがなにより最高。本作は2018年リリースの2作目でリリースはなんとCrammed Discsから。街灯を登るお茶目な姿が見れるPVも必見。

Karabrese / Fleischchäs

rumpelmusig, 2021

スイスのプロデューサー/DJ、Sacha Winklerの2021年作「Let Love Rumpel (Part 1)」収録曲。生音+エレクトロニクスの絶妙なトラックの上にゆらゆらと彷徨うバリトンサックスとポエトリーが琴線を刺激、ふいに出てくるスナップやらリコーダー、カリンバもとてもいい塩梅。

Ramuntcho Matta / Écoute

Cryonic  Inc., 1985

Don Cherryとの共演でも知られるフランスの音楽家RAMUNTCHO MATTAによる85年作。bpm100前後のアフロパーカッションにフリーフォームなサックスが被さるMarimbula , 同時代のポストパンク〜ニューウェーブとの共振も感じさせる “Ecoute… ” ” Ibu”などを収録したエスノ・アヴァンジャズの傑作。翌年リリースの『24 Hrs』もあわせて必聴です。

Mamazu / Dada

SABI, 2021

東京拠点のDJ/プロデューサーMamazuによる2019年楽曲。呪術的なパーカッションとチャントが秘境へ誘う瞑想的ダンストラック。土着的サイケデリック感高濃度なオリジナルもナイスだが、エクアドルのプロデューサーNicola Cruzによる Remixも捨てがたい。野外で爆音で聴いたら堪らないだろうなぁ。

Angel Bat Dawid / Black Family

International  Anthem, 2019

シカゴ前衛ジャズシーンから現れたクラリネット奏者/作曲家による初リーダー作品『The Oracle』に収録。地鳴りの様なベースとタイトなドラムのうえを幻想的なクラリネットの旋律がふわふわと浮遊するスピリチュアル・エキゾジャズ。Sun Ra〜Alice Coltrane〜AAOCあたりを確実に継承しながらその先を感じさるモダンなプロダクションが素晴らしい。2020年『LIVE』での熱演も是非。

Bendik Giske /  Cracks

Smalltown Super Sound, 2021

ロシアン・レフトフィールドテクノの才人Pavel Milyakovとの共作アルバムも素晴らしかったノルウェーのサックス奏者。アブストラクトなサックスとパーカッションの反復が生む中毒性と酩酊感、スカスカの『空洞です』をさらに解体して『World of Echo』に一晩漬けたようなミニマル・エクスペリメンタル・ジャズ。

Ultramarine / Breathing

Les Disques Du Crépuscule, 2019

90年代初頭から活動するUKエセックスの二人組による2019年作『Signals Into Space』に収録。最近のMusic From Memoryのカタログとも共振するようなバレアリック〜ダウンテンポ。過去にはロバート・ワイアット、ケヴィン・エアーズ等との共演歴もあるようで、このレイドバック感はカンタベリーからの地続きと思うと腑に落ちるものがありますね。昨年リリースのEP『Interiors』も夢見心地な最高のメロウ・エレクトロニカ。

Mike Cooper / Oceans of Milk and Treacle

Room 40, 2022 

ブリティッシュ・ブルースの偉大なるギタリストにして90年代以降は実験的な音響作品を量産するマイク・クーパーの2022年最新作。ラップスティールギターが持つエキゾフィールと3種のサックスにフィールドレコーディングがコラージュされたエキゾ・アンビエント。ノスタルジックと簡単に言うのは憚られるような音世界はJon Hassellと並べても最早遜色なし。

Moondog / Snaketime Series

Moondog Records, 1956

いまあらためて聴きたいNYストリートから現れた盲目の音楽家による56年第1作目。東洋的な旋律とチャカコポ乾いたパーカッション、赤子や動物達の鳴き声までミックスされた永遠に謎めいたサウンドは何とも似つかないエキゾシチズムを纏っています。

細野晴臣 / 洲崎パラダイス

Speedstar Records, 2017

1956年の日活映画『洲崎パラダイス赤信号』からインスピレーションを得た2017年『Vu Ja De』収録曲。いまは存在しないものへの憧れから生まれるフィーリングがやはりエキゾの本質。この楽曲から漂う不気味さやいかがわしさにはその魅力の全てが詰まっているように感じます。

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FYOC Favorite List 2021

今年はいろいろな形でFYOCに関わってくれた皆様に2021年のお気に入りの作品を選んでもらいました。ニューリリースも再発もあり、アンダーグラウンドなビート・ミュージックから映画、ドラマ、漫画までFYOCらしい独自のリストになったと思います。シーンや時代の流れとは何ら関係なく極私的に選ばれたこのリストであってもなんだか2021年を感じさせてくれるから不思議です。今年はいろんな事情もあり清々しいほどマイペースな更新になってしまいましたが、2022年に向けて色々とワクワクするような企画も準備中、とりあえずはこちらのリストでもって2021年を振り返ってみました。
このページで紹介されている作品にさらに数十曲プラスした(Spotifyにあるものだけです)プレイリストも最下部に貼ってます。正月休みの暇時間のお供にどうぞよろしくお願いします!

Dean Blunt / BLACK METAL 2

元Hype Williamsの片割れによるニューアルバムは全編に腑抜けたギターをフィーチャーしたソフトサイケデリック、もしくは異形のアシッドフォークアルバム。あらゆるものから距離を置くような孤独でくたびれた歌がなにより素晴らしい、前向きさとはかけ離れたある人にとってはとてもひたむきな音楽。

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V.A. / SPLINT

ブリストルのネットラジオ局兼インディレーベル“Noods Radio”によるコンピシリーズ第二弾。乱打されるトライバルなパーカッションにスペイン語のフィメールボーカルが乗るミュータントなラガマフィン「Azione Reazione」など、乱暴なダンスホールナンバーに痺れる一本。カセットのパッケージもイケてます。

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Eva Noxious / Anti Todo

チカーノ・フィメール・ラッパーEva Noxiousの音源をオランダのエレクトロレーベル“Bunker”がコンパイル。爆音で聴きたい粗悪なビートと意外(?)にもドリーミーでフローティンな上モノが最高に癖になるG-Funk〜Phonk。あっという間に聴き終わる、全13曲23分。

Space Africa / Honest Labour

NTSのレジデントも務めるマンチェスターのデュオ最新作。最初はダブっぽかった前作の方が好みだったけど、ディープなエレクトロニクス〜ダウンビートを聴かせる今作も聴けば聴くほど良い。アンビエントトラックであってもUKガラージ由来のざらついたストリート感があって何よりそこにグッとくる。

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DRTYWHTVNS / Aloof

“Orange Milk”からリリースされたUSのラッパー兼トラックメイカーのデビュー作。トラップ、エレクトロ、ディスコ、ハウスをミックスしたカラフルでキャッチーなサウンドながら、”資本主義の世の中でインディペンデントな音楽活動を続ける事に対する苦悩”が歌われているというギャップに2021年らしさを感じる。

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KM / EVERYTHING INSIDE

今、飛ぶ鳥を落とす勢いのプロデューサーによるアルバム。このアルバムはリリースされてから今までコンスタントに聴いていた印象なので、個人的に今年1番聴いたんじゃないかなって思います。アルバム通して心地良いんですよね。朝昼晩いつでも聴ける感じ。中でも1、3、4曲目あたりが好きでよく聴いてました。ワンマンライブにも参戦して、人生初の最前列でかなりヘッドバンギンさしてもらいました。これからの活躍にも期待大!

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『逃げた女』ホン・サンス監督

これまでの集大成と思えるような完成度でありつつ、新しいフェーズに入ったかのような清々しさ。ホン・サンスと言えばのズームインはあれど、物語時間軸の入れ替えや繰り返しなど無くとてもシンプル。ひとりのごく個人的な映画のようでいて、この開かれた風通しの良さは一体なんだろうと思う。寂しげな影をひきつつ明るいムードを纏う主演キム・ミニの佇まいが素晴らしい。

Patrick Shiroishi / Hidemi

ロサンゼルスの日系アメリカ人サックス奏者によるエスペリメンタル・ジャズ・アルバム。情感溢れるセンチメンタルなフレーズがミニマル・ミュージック的反復のうえで現れては消える多重録音サックスソロ作。実験的ながらもミニマルなフレーズのループは体を揺らし、ときにエモーショナルなフレーズに心まで揺さぶられます。

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Yl Hooi / Untitled

オーストラリアはメルボルンの地下で活動するアーティスト。詳細はいまいち不明。オリジナルリリースはメルボルンの良質レーベル“ALTERED STATE TAPES”のカセット音源。80年代ダブの質感をアンビエント〜バレアリック以降の感覚でD.I.Yに表現したエクスペリメンタル・ポップ。マッドなビートが気持ち良すぎる「Prince S Version」、Love Joysのメルトダウン・カバー「Stranger」などが白眉。

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『ブラック・ウィドウ』ケイト・ショートランド監督

本格アクションを織り交ぜ綴られる登場人物それぞれの距離感、そこから提示される家族像にしみじみ。シリーズものとしての制約やジャンルの枠が、創作物語を成立させていたり、テーマや表現の工夫を生んでいるのではないか。往年の70年代アメリカ映画みたいなコンパクトかつ熱い感動と重ね合わせて観てしまうのは、そうしたところからかもしれないと思う。

BLAWAN / Woke Up Right Handed EP

UKのテクノプロデューサーBLAWANがバチバチに攻め攻めなフロアボムを投下。UKベース、ブリープテクノ、インダストリアル、ポストダブステップなどなどをハードにミックス。「Under Belly」の突っ込みすぎて割れちゃった感じのシンセとか最高。

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99 Neighbors / Wherever You’re Going I Hope It’s Great

昨年リリースしたシングル「GUTS」がとにかく格好良くて気になっていた、アーティスト集団によるアルバム。ラッパー、シンガー、プロデューサーが在籍しているので、曲ごとに魅せる顔が違って、メロウだったり、妖しかったりで1枚通して楽しめるから好きでした。BROCKHAMPTONと比較されがちみたいですが、個人的には格好良ければ何でも良いので、これからも動向を追っていきます!

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『フリーガイ』ショーン・レヴィ監督

現代的な題材や当然のCG映像表現ながら、古典的なアメリカコメディ映画のような愛らしさを感じた。特にライアン・レイノルズ演じるガイとその友人である銀行警備員との間には、とても感動的なバイブレーションがあって、ラストふたりの邂逅においてルネ・クレール監督『自由を我等に』を連想し思わず涙。チャップリンやキートン映画のようにイキイキ楽しい作品。

Leslie Winer / When I Hit You – You’ll Feel It

早すぎたトリップホップ、Leslie Winerの未発曲含むアンソロジー盤。90年代初頭の香りがムンムンする無骨なビートとダンスホール由来のマッシヴなベースラインが耳と腰にグッとくる今まさに最高な音、初出曲「Roundup Ready」だけでもマスト。アートワークだけが少し残念!

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V.A. / Late Night Tales Presents Version Excursion Selected by Don Letts

1978年のジョン・ライドン初ジャマイカ渡航にジャーナリストで近年自身の音源が再発されたビビアン・ゴールドマン(著作『女パンクの逆襲 フェミニスト音楽史』12/23発売)と同行し、フィルムメーカーでTHE SLITSのマネージャーでBig Audio Dynamiteのメンバーでもあるドン・レッツ。その彼の選曲によるJoy Division曲のレゲエDUBカバー含む全曲素晴らしいコンピレーション。

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『ジャングル・クルーズ』ジャウム・コレット=セラ監督

全体の出来というか、設定、脚本等の完成度その他諸々に思う事は色々とありそうなのは確かだとしても、テンポといい美術といい個人的にかなり好み。漫画『タンタン』や小説『エルマーの冒険』を読んだ時のような気持ちになってワクワク楽しんだ。追いつ追われつが螺旋状に広がる物語構造と世界を彩る明暗のコントラスト具合にニール・ゲイマンの小説も連想した。

Brainstory / Ripe EP

今年の夏はほとんど出かけてないから大体これでトリップ、“Big Crown”オール髭面バンドの最新EP。メロウな歌ものも相変わらず素晴らしいがソファーか沈み込んでいくようなドープで陶酔的なインスト曲が堪らなく気持ち良い。サイケデリックで清々しいほどにだらしない最高の一枚。

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『ハイ・フィデリティ』

2020年のHulu作品が今年Disney+で配信されて視聴。原作小説と映画版とは違うトーンで再構成されていて、テーマの切り口などは同じNYが舞台のNetflix『マスター・オブ・ゼロ』と少し似てる。この作品ならではの劇中音楽やレコードの扱いは変わらずとても魅力的で、フランク・オーシャンはかかるし、当然のようにNumeroの再発に親しんでいるような選曲。音楽監修クエストラブ。

Awich / 口に出して

まずは姐さん、祝・武道館!今や日本のHIPHOP界で文字通り最先端にいらっしゃるAwich姐さんのシングル曲にだいぶ食らいました。いやー、格好良い!!ダブルミーニング的な内容のリリックがもう堪りません!今年は2回ライブに行かせて頂いて文句なしに最高だったし、武道館ももちろん参戦予定です。どっぷりハマってます。はい。これからも付いて行きます!

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Wool & The Pants / 二階の男

MAD LOVE Recordsと初台のギャラリーLAID BUGの共同リリース「TWIG EP」収録曲。路上から密林に迷い込んだMoondog的エキゾ・ヴォーカル・ダブ??スローかつ重心低めにクルーズするビートとロウでスモーキーなヴォーカルに高まり、アウトロのサックスで昇天する傑作曲。クールなアートワークの限定10inchは探せばまだ買えるはず。

『わたしの“初めて”日記 Never Have I Ever』

Netflixドラマ。今年シーズン2が配信されて視聴。いわゆるアメリカ学園ドラマで、突然父親を亡くしてしまった10代の主人公を中心に笑いあり涙ありの日々がテンポよく描かれる。製作総指揮がミンディ・カリング(映画『ナイト・ビフォア』でセス・ローゲンにドラッグ詰めをプレゼントしたその妻役の俳優)と知るとより納得感が高まる内容。22年シーズン3配信予定。

Tiziano Popoli / Burn The Night – Bruciare La Notte : Original Recordings 1983 – 1989

イタリアのミニマル・コンポーザー80年代の録音をまとめたコンパイル盤、リリースはRvng Intl.とFreedom To Spendのダブルネーム。ミニマルなシンセ×Roland TR909ドラムマシンによるアヴァンニューウェーブポップ、アンニュイな脱力ヴォーカル入りのIunu-Wenimoなど2021年的にジャストなサウンドも多数。

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LAYA / Bitter

2021年、個人的発掘アーティストはこれ。
ジャケットは派手なのに、曲は全然派手じゃない!音数少なめの今っぽいR&Bなんですが、HOOKが良いのと、ビジュアル含めてドンピシャだったので彼女が1番の収穫でした。昨年には「SAILOR MOON」なる曲をリリースしていたようで、ジャケットとMVがまんま過ぎて、ネタ系かな?なんて聴いてみたら意外に良くて度肝ブチ抜かれました。ひょっとしたら、ひょっとするかもなスター性を秘めてる気が…。要チェケラ!

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Snoh Aalegla / TEMPORARY HIGHS IN THE VIOLET SKIES

デビュー時からずっと好きでアルバムがリリースされる度に前のめりで聴いてるSNOH AALEGRAの最新作。リードシングルの「LOST YOU」からして格好良さがハミ出てましたが、やっぱり良かったですね。声が最高というかもうツボなんです。以前ビルボードでのライブが中止になってしまったので、いつかは生で拝みたい。

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『つつがない生活』INA

現実に寄り添いながら、現実を飛び越えるような表現。そのバランス感覚が最高。これだけ生活の匂いを感じるマンガがあるだろうか。ストレスは日常でぼとぼとと地面に落とされていく。取り除いていくことは不可能だけど、実はそれを路傍で拾い上げる事がふと救いになることもある。ラストできらめくイヤリングが象徴するようにどこかで続いていく生活がひたすら愛おしい。

http://to-ti.in/product/tsutsukatsu

澁谷浩次 / Lots Of Birds

バンドyumboのリーダー、澁谷浩次初のソロアルバム。ロバート・ワイアット『ロック・ボトム』やルーリード『コニー・アイランド・ベイビー』の隣に並べたいような、1人でこっそりと聴きたくなる親密で静かでユーモラスな11の小さな物語を収録。志賀理江子の写真を使用したアートワークも素晴らしい。

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V.A. / Wounds of Love: Khmer Oldies, Vol.1

サウンドシステム導入以前のジャマイカ音楽に焦点をあてたシリーズ『If i had a pair of wings jamaican doowop』が刺さりまくったロンドンの発掘専科Death is not the endのニューリリースは60年代カンボジアン・オールディーズ・コンピレーション。いわゆる辺境ものコンピとは一味違う、気を衒わないセレクトに感銘をうけます。何の変哲もないただの名曲l Love Only Youに涙。

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Ruth Mascelli / A Night At The Baths

ニューオリンズの No Waveパンク、Special Interestのメンバーによるインダストリアル・テクノなソロ1作目。フロア仕様のハードテクノもイカすけどトリッピーなシンセのアンビエントトラックがええ感じで良く聴いた。クールなアートワークはやっぱりStudio Tape Echo。

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Eve Adams / Metal Bird

カナダのポストパンクCrack Cloud界隈から現れたシンガーによるフォーキー・バラッド集。リンチ作品あるいはダグラス・サーク作品に漂う50年代アメリカの妖気に満ちたダークでメランコリックな一枚。Military Geniusによるサイケデリックな味付けのプロデュースも絶妙。

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『僕らのままで We Are Who We Are』

イタリア内のアメリカ、キオッジャ米軍基地で暮らすティーンとそれを取り囲む大人達との青春群像劇。眩い陽光の下を彷徨う主人公フレイザーを追い続ける陶酔的な第一話から一気に駆け抜ける全8話。大人も子供も正しさなんて分からないまま、揺らぎ続ける感情とその一瞬を焼き付けたルカ・グアダニーノの鮮烈作。最高!

『Covid 33』山本美希

いま未来の話を書くこと。たとえその未来が明るい未来でなくとも、そこにあるかもしれないかすかな希望をキャプチャーしようとすること。いまだ感染症が蔓延する2037年を舞台に創作と祈りについての短編20ページ。ランバーロール04に掲載。

http://to-ti.in/product/covid-33

『すばらしき世界』西川美和監督

人生の大半を刑務所で過ごした元ヤクザの男が、還暦を前に出所し、社会復帰のために悪戦苦闘する物語。
生活保護の実態と自己責任論、格差社会とキャンセルカルチャー、息苦しく閉塞的な現代の日本を「すばらしき世界」というタイトルでユーモラスかつ切実に描いた2021年最も心に響いた作品。

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FEATURES PLAYLIST REVIEWS

50 SONGS OF 2020

1.Standing On The Corner – Angel

Angel / Standing On The Corner

フリージャズ、ヒップホップ、ソウル…あらゆる音楽を取り入れながらそのどれとも言い切れない音楽を鳴らすニューヨークのアートコレクティブSOTC。待望のニューリリースはかつてないほどキャッチーでありながらも彼ららしいコラージュ感覚とユーモラスな実験に溢れた最高の一曲。古びたマシンから流れ出したビートは宇宙を泳ぐように揺れながら時には破裂し木霊したりしてメランコリックなサックスと戯れていく、楽曲の雰囲気を見事に視覚化したメルヴィン・ヴァン・ピーブルズ出演の PVも合わせて。

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2.Tvii Son – Out of Vogue

ウクライナはキエフ発、エクスペリメンタル〜エレクトロバンドによるデビュー作から。ダークで硬質なビートと絶妙に力の抜けたLucyのヴォーカルが醸し出すなんとも言えないクールネス。ブリストルとベルリン、その両方のサウンドを独自に昇華したインダストリアル・ダブ。

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3.Parris – Soft Rocks With Socks

bpm100ぐらいで絶妙につんのめるマシンビートを軸にアブストラクトなシンセや打楽器、ユニークなベースがふらふらと現れては消えるダビーハウス。デカイ音でも延々と聴けるオーガニックで繊細な音作りが気持ちいい。今年のParrisはHarajuku GirlsとYureiも素晴らしかった。

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4.Slauson Malone – Smile #6(see page 198 and 158)

ツアー先で手に入れたアコースティックギターを全編にフィーチャーしたEP「Vergangenheitsbewältigung (Crater Speak)」収録。ギターの爪弾きにボイスサンプルがコラージュされていく前半とチープなビートとラップによる後半。実験的なフォーク作品ともヒップホップの異形とも聴こえるメランコリックなサウンドは唯一無二。

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5.Phew – The Very Ears of Morning

エレクトロニクスと声、ヴィンテージなリズムマシンによって構成された傑作「Vertigo KO」のファーストトラック。夜明けの瞬間を永遠に引き伸ばしたような圧倒的に美しいシンセアンビエント、眠気が飛びます。

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6.King Krule - Underclass

リリースは2月。その後の世界を予見するような内向性と乾きの中にある少しのメランコリー。終盤のムーディーなサックスの旋律に彼の新たな表情を感じる。

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7.Wool & The Pants / Bottom of Tokyo #3

Bottom Of Tokyo #3 by Wool & The Pants - TuneCore Japan

『Wool In The Pool』に収録のNo Wave的ファンクが大胆にリアレンジされた2020年新録曲。Sly Stone、後期CANを連想させるチルアウトなトラックの上で歌われるのは新しい意味を持った「明日街へ出よう」。緊急事態宣言期間中にリリース、印象的なアートワークは東京暮色とフランシス・ベーコンのアトリエのコラージュ。

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8.Aksak Maboul – C’est Charles

ベルギーのアヴァンポップ・レジェンドによる40年ぶりの新作「Figures」。本曲は往年の名作感をまったく感じさせない現代的なサウンドとビートを持った2020年のアートロック。

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9.Model Home – Faultfinder

Throbbing Grisle meets MF Doomとは言い得て妙。今年一番ドープなビートと変調された癖になるライム、アートワークと共鳴するような粒子の荒いサウンドは中毒性かなり高めです。Warp傘下Diciplesからのリリース。

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10.Pavel Milyakov – Odessian Dub

Pavel Milyakov - Odessian dub

モスクワのテクノ・アーティストButtechnoことPavel Milyakovによる幻想的なアブストラクトダブ。不明瞭な旋律の電子音と重たいビートのコントラスト、真夜中の霧深い街を彷徨い歩くような美しいサウンドスケープ。ウクライナ・オデッサの街に捧げられているらしい。ふらふら歩くには丁度いいサウンドトラック。

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11.Frank Ocean – Dear April

結局”Dear April””Cayendo”の2曲のみだった2020年のフランク・オーシャン。Acoustic ver.というだけあってシンプルな伴奏のみの楽曲だがフィンガリングノイズにまで徹底されたアンビエンスと圧倒的な歌声、これだけで何にも変え難い凄みがある。

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12.JPEGMAFIA – living single

90年代アンビエントテクノ的なシンセ、音数の少ないビート、最高のタイトル。あっという間に終わってしまうが、寝るにはまだ早いなと思わせてくれる。

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13.Puma & The Dolphine – Supermarket

Amazon Music - Puma & The DolphinのSupermarket - Amazon.co.jp

ブルガリアの気鋭プロデューサーによる快楽的アフロ・エレクトロニクス。ポコポコしたリズムマシーンとエキゾなウワモノの絡みはまるでカメルーンの伝説Francis Bebay。アルバムタイトルは「Indoor Routine」。

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14.Pearson Sound,Clara! – Mi Cuerpo

PEARSON SOUNDと、スペインのPRR!PRR!コレクティヴのCLARA!による最高のベースチューン。徐々に盛り上がるスペイン語のチャントがやばい脳内フロアキラー。部屋で踊りましょう。

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15.Playboi Carti – M3tamorphosis

2020年の終わり、待望のリリースとなったCartiのニューアルバムから。90年代メンフィスラップのカセットテープを想起させるざらついた音像が衝撃的。

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16.Burial,Four Tet,Thom Yorke – Her Revolution

幻想的なピアノループと淡々と脈打つビート、トム・ヨークの歌声がこんなにも伸びやかに感じられるのはいつぶりか。2020年の終わりに届けられた9年ぶりのコラボレーションにして名曲。

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17.Liv.e – SirLadyMakemFall

「 F.R.A.N.K」(2017)の頃にあったローファイソウルの面影を残しつつ理想的な進化を続けるダラス出身のシンガー Liv.e(読みはリヴ)。オルガルのループとSlyishなビートが身体をゆらすいなせなレディソウル。

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18.Haim – Los Angels

冒頭のサックスとドラムだけでもう最高。ラップ〜R&B以降のサウンドを当たり前に取り入れながらルーツである70年代西海岸の香りまで漂わせるしなやかなグルーヴと開放感、ヴィンテージなだけじゃない楽器の鳴りも素敵!

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19. Anthony Moore – Stitch in Time

40年の時をこえようやくオフィシャルリリースされた75年のお蔵入りアルバム「OUT」の冒頭曲。イントロの拍からして変だが一聴するとキャッチーなモダンポップにしか聴こえないのがすごい。

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20.Holy Tongue – Misinai

たしかにこれはLiquid Liquid、23skidooあたりが好きな人間は避けては通れない音。トライバルなパーカションとポストパンクの実験精神が邂逅したオルタナティヴダブ。

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21.Eddie Chacon – Trouble

チープな打ち込みとシンセによる自主AOR的なサウンドをアンビエント〜ニューエイジ再評価以降のセンスにまとめあげたのはきっとJohn Carroll kirbyの手腕だろう。「お前は悩みの種を増やすだけ」と繰り返し歌われる頭抱え気味なメロウソウル。

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22. Adrianne Lenker – zombie girl

都市から離れた山小屋でアナログ機材のみを使い録音されたソロ作。アコースティックギターとか細い声、遠くから聞こえる鳥のさえずり。喧騒から離れた場所で孤独と向き合うことによって生まれたシンプルだからこそ心をうつフォーク作品。

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23.Ryu Tsuruoka – Omae

横浜生まれのメロウな手口のシンセ歌手(トークボクサー)、ムードにこだわる音楽家。
PPUからのリリースとなったシングルは危険な甘さのトークボックス・バラード。アーバンとかメロウとかそういう言葉はここまで艶っぽい音楽にだけ使われるべき。

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24.坂本慎太郎 – ツバメの季節に

2020年後半にリリースされたシングル4曲はどれも素晴らしかったが「何年経って元に戻るの?」の歌い出しからはじまる本曲ほどいまの空気をキャプチャーした曲はなかったように思う。

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25.Moor Mother –  Forever Industries  A

とにかくたくさんのリリースがあった2020年のMoor Mother。サブポップからリリースの本曲はスウェーデンのビートメイカーOlof Melanderとの共作。

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26.Dirty Projectors – Overlord

ギター、ベース、ドラムのシンプルな楽曲に彩りを与えているのは各楽器の鳴りを完璧に捉えたMIXとDPらしい鮮やかなコーラスワーク。懐古的にならざる得ないバンドサウンドが多い中、本曲の独創性は際立って聴こえる。

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27.Holy Hive – Hypnosis

HOLY HIVE - Hypnosis

2020年も素晴らしいリリースを続けたBig Crownから。抑制が効きながらドラムスティックのワンストロークまでもが目の前に浮き上がってくるような、風通しのよいSweet Soul。

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28.Flanafi – Inner Urge

アメリカのAvant PopデュオPulgasのギタリスト、Simon Maltinesによるソロプロジェクト。ディアンジェロ、スライへの偏愛をプログレッシヴな感性でコーティング、この変態性は聴けば聴くほどくせになる。

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29.NENE – 慈愛

妖怪(!)を題材にした傑作ソロ「夢太郎」からのPV曲、歌い出しはいきなり「おばけが見える」。内面の揺らぎを描写した歌詞とスペイシーなシンセによるスピリチュアルなトラックが新鮮なまさに新境地の一曲。

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30.Military Genius – L.M.G.D.

Military Genius / Deep Web

カナダのポストパンクClack Cloudのメンバーによるソロ。ダークなアンビエントにまみれたアルバムの中では異色のダウンテンポなコールドファンク。

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31.Jabu,Sunun – Lately Dub

lazer_fennec's collection

ブリストルサウンドを更新し続けるクルーYoung echoのメンバーによる平熱のUKソウル。7inchB面に収録のSununによるとろとろのダヴバージョンが真夏の室内に最適でした。

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32.DJ CHARI & DJ TATSUKI – JET MODE feat. Tyson, SANTAWORLDVIEW, MonyHorse & ZOT on the WAVE

とにかくキャッチーなフロウとビート!一度聞いたらもう「おれらとめられね」って歌ってるしいつの間にか無限リピートして聴いている。

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33.テニスコーツ – さべつとキャベツ

Changing / Tenniscoats - Minna Kikeru

黄倉未来によるヒプノティックなビートにまず驚かされるが重要なのは何よりそのリリック。「あいつ」への直球の怒りといつのまに自分を侵食していく病気、たくさんのユーモアを交え歌われる気高く美しいテニス流プロテストソング2020。

Minnakikeru

34.NAYANA IZ – WALKING

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35.keiyaA – Way Eye

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36.Tohji – Oreo

Tohji – Oreo Lyrics | Genius Lyrics

いま踊れる曲を作ることに対する違和感をSNSで表明していたように新曲は90sテクノを彷彿とさせるアンビエントトラック。Oreoとチェリオがマントラの様にならぶリリックも面白い。

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37.Jon Bap – Help

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38.Hiiragi Fukuda – Vivian Girl

アルバム『Raw-Fi』冒頭曲。無機質なビートとラフなギターの生々しさがいい塩梅で同居したトラックにぼそぼそと呟かれる歌。淫力魔人よ助けて…デカダンな雰囲気とベッドルーム的内向性をあわせもった不思議な魅力。

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39.Lizette & Quevin – Talk To Me

Talk To Me - Lizette & Quevin

BrainstoryのKevin Martinと陶芸家のLizetteによる、60-70年代に活動したチカーノ・ソウル・バンド、Sunny & Sunliners のカバー。このカサカサした温かい音像とメロディーは誰もがやられてしまうのではないでしょうか。

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40.Navy Blue – Ode2MyLove

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41.Lil DMT ,  Lil N1P – COMO SOY

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42.BLACK NOI$E – The Band (feat.Live.e)

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43.Cindy Lee – Heavy Metal

Cindy Lee - Heavy Metal

埃がかったギターのイントロから、壊れかけのオルゴールのようなガールズポップスサウンド。墓場の運動会に流れていそうな音楽。

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44.石原洋 – formula

石原洋/formula

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45.Childish Gambino – 42.26

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46.redveil – Campbell

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47.John Cale –  Lazy Day

ガタガタ揺れたリズムと不安を煽るような調子外れな鍵盤がなぜか心地よく、隙間から覗くように現れる対比的なパートと合わせてこの状況下にしっくりきた最高のチルアウト・ソング。ピンクの髪もキュート。

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48.Vula Viel – My Own Skin

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49.山本精一 – フレア

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50.TOXOBAM – shabby function

狂気のコラージュに忙しないカットアップ、オモチャ箱じゃなくて新宿の裏路地の汚ねえゴミ箱をひっくり返したようなシティ・ミュージック for フリークス。夜に聴くと眠れなくなる。

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Forge Your Own Tapes Vol.3
FYOC Recent Favorites 2020.09

FYOC最近のお気に入り。ニューリリース&少し旧譜もあり、夏の終わりにどうぞ。Spotifyプレイリストのリンクはページ 最下部 にあります。

1. Slauson Malone – Smile #6(see page 198 and 158)

Standing On The Corner創設メンバーの1人、Slauson Malone こと Jasper Marsalis。「A Quiet Farewell 2016 – 2018」以来となるNew EP「Vergangenheitsbewältigung (Crater Speak)」からの1曲。アルバム全編を通してアブストラクトなフォーキー・コラージュ・アルバム。「Some Rap Songs」の流れを感じる前作からはまたスタイルを変えジャンルの枠を超えるエクレクティックな傑作です。
STOCの「Angel」「Get Out」と聞き比べると2人が袂を分かった訳が分かるようで何だか切ない。

2. redveil – campbell

冒頭のギターサンプルのふくよかな音たるや….
redveilはメリーランド州出身の若干16歳のビートメーカー&ラッパー。この曲はニューアルバム「niagara」の1曲目、やっぱりearlを想起させます(特にsome rap songsのRiot!)。どんだけearlばっかいってんだと思われると思いますがそのくらい重要な作品だっだと思うんです、あのアルバム以降以前で作品の語られ方が変わるような。そういえばearlが「Doris」をだしたのも16の時だった、これからが楽しみな人です。

3. Lizette & Quevin – Talk To Me

分かる人には分かる。このスカスカなバンド・サウンドと絶妙に物足りないヴォーカルによるトワイライトな世界。素晴らしいヴィンテージソウルを量産し続けるレーベルBig Crownからのニューソング。いつでも時代錯誤な音楽を奏で続ける人がいるのは頼もしくもあると感じる今日この頃、何の変哲もない良い曲。

4. Anna McClellan – Pace of the Universe

オマハ出身、ニューヨークを拠点に活動するシンガーソングライターによる3枚目となるフルアルバム「I SAW FIRST LIGHT」からの1曲。インディロックやらローファイなんて言葉はもう死後。でもここで鳴らされている音や歌はいま他の何とも似ていなくて久しぶりにハッとしました。どういう声に持ち主がどんな風に歌うのかというのは本当に大事、そういう意味ではダニエル・ジョンストンなんか思い出したりもします。

5. drea the vibe dealer – Sunshine in the Shadow

シカゴを拠点に活動するソングライターdrea the vibe dealerによる2019年楽曲。90年代R&B~トリップホップ的なエッセンスを感じるトラックに絶妙にいなたいヴォーカル。バンドサウンドの比重が多いトラックも古臭くなくSZA以降を感じられる新鮮なサウンド。2020年リリースのEP「Triple Goddess」も良い。

6. VRITRA – NEURINS

Matt Martians(The Internet)とのユニットThe Jet Age Of Tomorrowでの活動でも知られるオッドフューチャーの才人Vritra。もたついて汚されたビートに耳持ってかれてるとあっという間に終わる、ドープなトラック。

7. Puma Blue – Velvet Leaves

サウスロンドンはまだ燃えているのか。Live音源を除けば実に2年ぶりとなる待望の新曲。装飾の少ないインディR&Bといった趣きは相変わらず、イギリスらしい平熱感とヴォーカルが気持ち良し。

8. ミツメ – トニック・ラブ 

新機軸は夏の夜にハマるミツメ流エキゾギターポップ。ギターロックを下敷きにアンビエント〜バレアリックな雰囲気を漂わせつつあくまでポップなのが最高。歌詞の世界観はもはやヴェイパーウェイヴ。

9. Meitei – Oiran Ⅱ 

広島のサウンドアーティスト冥丁によるニューソング。ピッチフォークでは”The Best Experimental Albums”にも選ばれたアンビエントの傑作だった前作からモードチェンジ。そのまま舐達麻がラップしそうな哀愁と叙情を感じるトラックに。これもまた”Lost Japanese Mood”のひとつのスタイルということ。

10. Michele Mercure – Beginning

アメリカの女性アニメーター、電子音楽家Michele Mercure。1983年〜1990年にリリースのカセット作品4作品からRVNGがコンパイルしたアルバムから。マシンビートとアナログシンセを中心に据え、チープ・エレクトロな楽曲からアンビエント、ブレードランナーさながらのサイファイ・シンセウェイヴにインダストアルまでかなり刺激的。2020年にはRVNGから新たなコンピも出てます。

11. Tvii Son – Simple Ends

LAPSが主宰するレーベルMICからリリース。キエフ発のインダストリアル・ダブ~レフトフィールドなテクノを鳴らす3人組によるデビュー作。ノイジーでインダストリーなビート+控えめなヴォーカルというアンバランスな魅力がやばい、ミュータント・エレクトロ・ダブ。

11. Kelly Lee Owens – Arpegi

ウェールズのソングライター/プロデューサー、2作目となるフルアルバムはレディオヘッドの理想的なカバーから始まる。同郷のジョン・ケイルが参加した「Corner of My Sky」ではディープなエレクトロニックバラードを聴かせ、氷の溶ける音をサンプリングしたフロアライクな「Melt!」は気候変動へのアンチテーゼか。

12. Moor Mother – Forever Industries A

とにかくあらゆる名義を使って出しつづけるムーア・マザー。サブポップからリリースの最新EPはスウェーデン出身のビートメイカー、Olof Melanderとの共作とMental Jewelryとの共作2曲。フューチャリスティック・エクスペリメンタル・ヒップホップ。

13. Phew – All That Vertigo

今年のベストに入るだろう傑作「Vertigo KO」収録曲。シンプルなエレクトロニクスと声を中心に作られた楽曲群は不穏と平穏を行き来して唐突に幕を閉じる。アルバムのメッセージは「なんてひどい世界、でも生き残ろう」。エレクトロニクスと声といえば同じくDisciplesのModel Homeにも通じるものがある、このレーベルは要チェック。

14. Tohji – Oreo

数年前だったら無しだったらサウンドが今はカッコいいのはよくあることでこの曲のトランシーなシンセもまさにそう。聴き方によっては初期Warp〜Aphexあたりのアンビエントなエッセンスも感じる夏の終わり系のチルトラック。「浜辺でやるOreo のむチェリオ」フロウのセンスは相変わらず天才的。

15. Anthony Moore – Stitch Time

Avant Popバンド”Slapp Happy”の創設者、アンソニー・ムーア。この曲は75年にリリース予定だったがお蔵入りになったロストアルバム「Out」からの一曲。ロック、プログレ、前衛、ポップ。そのどれでもあってどれでもない、なにかの外側にポツンと存在する音。「Out」は40年の時をこえて11月にDrag Cityからリリースされる。

16. Pixies – Wave of Mutilation (UK Surf) 

「はちどり」も「ブックスマート」も良かったけどこの夏印象に残った1本は「mid90s」。Pharcydeのラストは勿論、90年代のHIPHOPクラシックがガンガンかかる音楽も最高。その中でもホームパーティーのシーンでかかったピクシーズのあえてこの曲。2020年的にはこっちのバージョンだよなって思いもあり。

17. Jonathan Richman – That Summer Feeling

祝「I,Jonathan」アナログリリース。どんなフォーマットで聴こうが勝手だろ、これ以上夏の終わりにぴったりな曲を知らない。ザットサマーフィーリン。

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Forge Your Own Tapes – Vol.2 Circus Melodie

過去に石原洋さんがライブでカバーしたことのある曲をまとめたプレイリストを作りました。
Spotifyには見当たらなかった曲があり、それらをこのページで紹介します。尚、プレイリスト含めこれらがその全てではありません。

こうして数曲並べただけでも、そこにどこか共通するメロディーやムードがあるような。

知らない曲を発見して、知ってる曲の魅力を再発見する。
そうやって音楽が広がっていくのは楽しいと改めて思います。

Precious / Metro

オリジナルアルバムではDavid Bowieがカバーした「Criminal World」に続く二曲目。可憐なムード溢れる曲。

Totalled / Eno

1974年の音源で、翌年発表のアルバム『Another Green World』に「I’ll Come Running」として収録されている曲。

Judy Get Down / Anthony Moore

個人的に日本でモダンポップと呼ばれるような音楽の良さを知るきっかけになった思い入れのある曲。

An Appointment With The Master / Bachdenkel

プログレ枠のバンドだが、プログレという概念(?)と70年代UKポップグループに共通するものを見出せた思い入れのある曲。

Double Exposure / Television

The Stars時代に演奏。亀川千代さんのベースはこういうスタイルの音楽だと尚のことプレイの格好良さが際立つなと思った記憶がある曲。

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Forge Your Own Tapes – Vol.1 Stay Home Ambient

家にいるしかない日々が続くと分かった時は「たくさん音楽を聴こう」とか考えていたもののいざ始まってみると音楽なんて何も聴く気が起きなかった。改めて思い知ったけれど、聴く音楽は精神に作用するし精神は聴こうとする音楽を当たり前に選ぶ。そんな時にアンビエントは最適だった。最近の少し過剰なアンビエント・ブームにはちょっと距離を置いているつもりだったがここに収録されているようなクラシックな意匠を纏う曲達の魅力には抗えないものがある。

職場の臨時休業が決まり、明日からどうしようと漠然な不安とともに新宿から伽藍とした歌舞伎町を抜け中野まで歩いた。
その夜の長い散歩道で聴いた50曲。そのせいか自然と重くないフィーリングでポップなのものが多くなったと思う。非アンビエント的なものも多く、あくまで個人的なでフィーリングで選んだ。

アンビエント・ミュージックの入門編として、ステイホームのお供に、夜の住宅街の散歩道のサウンドトラックにもきっと最高です。


Brian Eno,Jon Hassellなどのパイオニア達はもちろん、Cluster, Conrad Schnitzlerなどのクラウト・ロック勢、そしてその影響をうけたWim Mertens,Durutti Columnなどクレプスキュール界隈の人たち。

Ho Renomo / Cluster & Eno

ギター音響的なところではさすらいのカウボーイ Bruce Langhorne, ブリティッシュ・フォークレジェンドの Mike Cooper のエキゾ・アンビエント、説明不要のParis,texasにあまりに美しいLoren Connorsの”Lullaby(the 1st)”。

PaumalMike Cooper
Lullaby (the 1st) / Loren Connors

近年この界隈の盛り上がりもあり素晴らしいリイシューがとにかくたくさんリリースされた、カナダのシンガー・ソングライターBeverly Glenn-Copelandの86年カセット・テープ音源は個人的に2019年良く聞いた1枚、アップル・コンピュータのソフトウェア開発にも携わった女流音楽家Laurie Spiegelの古典的名作「The Expanding Universe」、国内のアンビエント作品も再発が一気に進み吉村弘や広瀬豊などは多くの人が知るところに。

Old Melody / Beverly Glenn-Copeland

非アンビエントものではMiles Davis”In a Silent Way”のNew Mix,Alice Coltraneに師事したハープ奏者Jeff MajorsはLalaajiなどにも通じるMeditatedな世界観、昨年シカゴの再発レ―ベルNumeroからリリースのコンピ「You’re Not From Around Here」に収録されたギター・デュオHouston & DorseyはSanto & Johnny”Sleepwalk”にならぶフローティング・ギターものとしても最高。

Baby Dauhter (ICE 015) / Jeff Majors
Ebb Tide (HT #1) / Houston & Dorsey

90年代テクノからはAphex Twin,Boards of Canada、相当久しぶりに聞いたヴェクセル・ガーランドによるエレクトロ二カの名作「Wunder」。この4月に”Dear April””Cayendo”がリリースされたFrank Ocean作品に関わるDaniel AgedとBuddy Rossの2アーティストの楽曲もいまの気分にはぴったり。

Jones / Wunder
Running Around / Buddy Ross