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MUSIC PLAYGROUND

好きっていう気持ち / おぼろげナイトクラブ
坂本慎太郎

A面に針を落とすと、もぞもぞとトレモロがかったような音と乾いた箱鳴りドラム。続いて変声子供声の合いの手から虫声とスティール・ギターが重なり寄り合わさっていく。というと、ソロ以降の総決算てんこ盛りサウンドのようだが、実際の音像は大仰さとは正反対の素朴な佇まいで、押し付けがましさやわざとらしさといったものは相変わらず一切無い。
T.rex~Princeを引き合いに出したくなる独特の軽み、あるいは地に足ついた異形のポップセンスが素晴らしい。といって、ギンギラにギラついたものではなくて、日向ぼっこしてるような優しい音だ。

B面ではさらに穏やかな様子を見せてくれる。波のように繰り返し寄せては消えるグルーヴに骨抜きにされて、目の前の景色がモアレ状に崩れ落ちてしまいそう。ストップモーション・アニメで表現されていた情報量がギュッと凝縮されたような音像だ。それでいて音数が増えることもなく、ふっと抜けるゆるい開放感が気持ち良い。
歌を象る言葉の選びと並びとリズムもさりげなく凄い。コーラスかけあい部分「~だね」にはグッときた。この声の主が人格を持った生き物として本当に存在しているかのようだ。

生き物といえば、これまでMV等ではお馴染みのキャラクターがレコードのジャケットに登場している。
つかず離れずの間柄だけど会えばいつも人懐っこくて知らない間に頼りにしている、子供の頃に夢見た最高の友達のような生き物。水木しげる『河童の三平』の向こうで手を振るタヌキのような愛らしさ。小舟でたどり着いた場所では死者もいきものも皆入り混じって歌い揺れ踊り続けている…
見て触って聴いて妄想が膨らむレコードならではのレコードだ。