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FUN THEATER THREE

FUN THEATER THREE vol.4

1

ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り

ジョナサン・ゴールドスタイン監督
ジョン・フランシス・デイリー監督
@T・ジョイ横浜

TRPG『ダンジョンズ&ドラゴンズ』を映画化した作品。
吟遊詩人エドガンは組織ハーパーの一員として世のため人のため日々戦い続けていたが、悪敵に妻を殺され組織を抜け泥棒稼業に。死者を甦らせることのできる“よみがえりの石版”の存在を知り、奪取を計るも失敗し牢獄に。しかし、脱獄してかつての仲間たちと共に再び石版を巡る冒険に挑む。

監督のひとり、ジョン・フランシス・デイリーは1985年生まれ。TVドラマ『フリークス学園(原題Freaks and Geeks/1999〜2000年放映)』で本人と同じ14歳の主人公サムを演じていたことでその存在は知っていたけれど、トム・ホランド主演のMCU『スパイダーマン:ホームカミング』に脚本で参加していたことで、役者以外にも脚本や監督をしていることを初めて知ったのだった。
役者以外にも、といっても『フリークス学園』の印象が個人的にめちゃくちゃ大きいだけで、現在に至るキャリアを見れば普通に立派な監督、脚本家である。最近だとDCの映画『ザ・フラッシュ』に脚本で参加している。

TRPGと聞いて、80年代以降のいわゆるナードというかオタク的な嗜好の持ち主が部屋に集まり嗜むテーブルゲーム、という映画やドラマ(『フリークス学園』でも登場する)で描かれてきたお決まりの姿以外は何も知らない筆者だが、映画は大変楽しめた。
すっきりした脚本と見応え充分な映像、そして活き活きと動き回る役者たちによる素晴らしい冒険活劇だ。

主人公エドガンを演じるクリス・パインと、その仲間の戦士ホルガ役の『ワイルド・スピード』シリーズでお馴染みミシェル・ロドリゲスはとても好きな役者なので、ふたりを一緒に見れてとてもうれしい。とにかくかわいくてかっこいい。
それだけでも満足なのに、敵役でヒュー・グラントが出ているのがまさにもうけもので、見た人なら誰もが思うであろうポール・キング監督『パディントン2』の時と同じく最高な役どころ。この人は卑劣な悪役を演じると、ダン・デュリエと雰囲気が似る気がする。
エドガンの娘役クロエ・コールマンを見るのは気付けばこれで三作目で、『ガンパウダー・ミルクシェイク』『マリー・ミー』と続いて今回もやっぱり頼りになるというか、やたらしっかりしてる子どもというキャラクター。さすがに現代の大人のダメすぎぶりはどうなのか? と少し思った。

映画は丁寧な語りのテンションと自然に親近感の湧く距離感があって、監督ふたりの過去作品『お! バカんす家族』と『ゲーム・ナイト』でもこれは同じ。
今回はTRPG原作のファンタジー企画ものと思いきや、やっぱりピーター・ボグダノヴィッチみたいなアメリカのコメディ映画ならではの気持ちの良さがある。
話がすっと広がって、始めと終わりで縁がぴったり合うようきれいに折り畳まられる。テーブルに置かれたナプキンのような折り目正しい佇まい。

今作は過去二作で少し感じたジャド・アパトー的な世界観からはひとつ頭抜けたようなところがあって、思ったのは、エドガンとホルガが組むパーティーにはあとふたり、魔法使いのサイモンとティーフリングのドリックという仲間がいるのだが、この存在が大きい気がする。
これまでとは違う若い世代のキャラクターが描かれていて、最近でいうと同じく魔法冒険譚のNetflixドラマ『プリンセス・マヤと3人の戦士たち』に出てくるキャラクターに通じるようなセンスがある。
大変なことは色々あるけれど、異常な執着や安易なひらき直りには陥らない、温かでディープなフラット感覚がいい。

2

悪魔の往く町

エドマンド・グールディング監督
@シネマヴェーラ渋谷

1946年発行のウィリアム・リンゼイ・グレシャム著『ナイトメア・アリー』を映画化した1947年公開作品。
カーニバルで働く駆け出しマジシャンのスタン。同僚の占い師から知り得た読唇術と持ち前の才覚によって全てを手に入れようとするが……。

リメイクというのか、同じ原作小説を映画化したギレルモ・デル・トロ監督による『ナイトメア・アリー』が去年公開された。
デル・トロ監督版はスタン以外の主要登場人物のキャラクターが原作より立体的に描かれていて、全体としてちょっと怖くて哀しいお伽話のような、いつものデル・トロ映画になっている。

で、こちらはというと、デル・トロ監督版と違ってキャラクターや各エピソードは割と原作をなぞった作り。
ただ、最後の最後で話のオチがごく普通のラブロマンスに変えてあって、これではせっかくの素晴らしい役者や美術も結局なんだったんだ、というシラけた気持ちに多少なる。

というのも、この原作小説というのが、タイトルそのまま悪夢の小路でトリコ状態になってしまう色々と強烈な物語で、ある種の救いもまるでなく、しかし、それが面白いところでもある所謂濃い作品なものだから、小説と映画は別ものとはいえ、つい原作を基準に考えてしまう。

3

港々に女あり

ハワード・ホークス監督
@シネマヴェーラ渋谷

1928年公開作品。酒と喧嘩にめっぽう強い水夫のスパイクは大男。世界中どの港にも女がいる。と、そのはずがまるでふるわない。そんな時、クールな水夫のビルと出会う。初めこそいがみ合うふたりだったが、じき意気投合し兄弟の契りを交わすのであった。しかし、スパイクがゴディバという女と出会うことで……。

基本的に飲んで暴れて歌って絆を深める、ハワード・ホークス定番の男の子讃歌。
定番といっても、この初期サイレント時代からその後40年近くも、型だけでなく質の高さも変わらないことに単純に驚いてしまう。

ただ、その男の子讃歌もさすがに素朴すぎて前半はやや退屈気味。
しかし、中盤過ぎルイーズ・ブルックスの登場で一気に引き込まれた。
ルー・リードとメタリカによるアルバム『ルル』の原作戯曲『パンドラの箱』の映画化で主人公ルルを演じたルイーズ・ブルックス。
今作の評判がそのきっかけになったそうだが、今見ても先鋭的なまでのモダンな雰囲気に納得してしまう。

主人公のスパイクとビルも素晴らしい。
スパイクを演じるヴィクター・マクラグレンのボートネックシャツでのスラリとした立ち姿のかっこいいこと。
気は優しくて力持ち、強面だけど芯は温かい人物像。トッド・ブラウニング監督『三人(原題The Unholy Three)』でもヘラクレスという役でそんなキャラクターを演じている。この映画はラストがとてもいい。
その相棒ビル役のロバート・アームストロングがまたかっこいい。撫で付けた前髪とニヒルな笑顔がなんとも魅力的だ。ジョセフ・ゴードン=レヴィットと少し似てると思った。

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