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The King Of The Endicott / Gary Wilson

The King Of The Endicott / Gary Wilson [ CLEOPATRA ] 2019

へんちくりんなメガネ、身体に巻き付けた紙テープ、ぶら下がったマネキンの首…
彼の名前にくっついてる枕詞を何とか避けたかったが、もはやこう言うしかない。“アウトサイダー・アーティスト”にして“ウィアード・ポップの鬼才” Gary Wilson。彼の2019年作が100枚限定でLPリリースされる。

1977年に発表された彼の代表作『 You Think You Really Know Me 』については、Beck や Ariel Pink らが彼からの影響を公言している事もあり、既に広く人が知るところとなっている。

Groovy Girls Make Love At The Beach / Gary Wilson

揺らぐエレピの薄皮の下で蠢くような不穏なアンサンブル。一方で軽やかなリズムと転がり回りじゃれつくような調子はずれのボーカル。多様なジャンルをないまぜにしながら何処にも属することのない楽曲は彼の奇天烈なイメージとは裏腹に緻密に計算されているように感じる。それは夢の中や、分岐した異なる時間だけに存在する現実から少しズレたパラレル・ワールドの中で演奏されているような音楽だ。

そして今作は、そんな彼が永い夢から醒めて寝ぼけているような、いつもとは違ったイメージを感じられる興味深い一枚。
公園にひとり佇んでみたり、雨の夜を歩いてみたり、半歩軸をずらして見えた世界に懐かしさを感じながらも、彼が歌にしてきた “Groovy Girls” 達に後ろ髪を引かれている。でも彼女たちはどこかに姿を消してしまったらしい。どこか寂しげな王様の後ろ姿が目に浮かび、軽やかなピアノの音がその落ちた影を際立たせている。

ちなみに、あたかも彼の心境に変化や覚醒があったかのように書いたが、別段そういうわけでもなさそうで、同じ年には R. Stevie Moore との共作も発表しているし、今年もいつも通り作品をリリースしている(こっちは未聴)。活動復帰後のほぼ毎年のリリースは止まる事はなさそうだ。

Walking In The Rain Tonight / Gary Wilson

2016年惜しまれながらも閉店したニューヨークのレコード店 OTHER MUSIC のドキュメンタリー映画トレイラー。本編では、Gary Wilson のインストアライブの映像やスタッフのエピソードも。

ジャズトリオ時代の演奏:Another Galaxy / The Gary Wilson Trio