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Big Crown Records
–未来のヴィンテージサウンド

ヴィンテージやらレトロやらといったワードは耳にタコ、レコードショップに生息し音楽好きに囲まれて生きているともうちょっとげんなりするほどよく聞くワード。しかし、そんなヴィンテージなサウンドにももちろん色々とあって50’s〜60’sにただただ忠実なだけではなく(意図してか意図せずか)当時の空気感や匂い?みたいなものまで浮かびあがらせ、さらにはそれを現代的にアップデートしてしまう、「一体いつの音楽なんだ?」そんな「?」が浮かぶ不思議なヴィンテージサウンドがごくごく稀にある。そのリアルに血肉化された、ただの真似事とは一線を画すサウンドは私のようないわゆる「ヴィンテージなサウンド」に懐疑的なリスナーにとっても新鮮に響く。

アメリカのブルックリンを拠点にするインディペンデントレーベルBig Crown Recordsはまさにそんなサウンドの宝庫。現行ソウルのリリース&ディープファンクのリイシューなどで知られる名門「Truth & Soul」の消滅後、オーナーであったLee Michelsが2016年に発足して以降、玄人達(あまり使いたくないワードだが)を唸らせる数々のリリース続けている。ようやくアナログリリース(Big Crownのアナログは音いい!)されたチカーノソウルレジェンドSunny & The Sunlinersの最高カバーアルバム『Dear,Sunny』,スウィートソウルの可能性を追求するHoly Hiveの新規軸シングル『I Don’t Envy  Yerterday』,そして『Bye Bye』『Long Day』と立て続けに傑作シングルをリリースしているBrainstoryなど2021年も話題に事欠かないBig Crown Recordsの魅力をいまさらながらご紹介!ページ最下部のプレイリストとあわせてどうぞ。

Brainstory

髭と髭と髭による3人組、ブレインストーリー。まず名前が最高にイカしてる彼らはカリフォルニアのストリートから現れたBig Crown最注目のソウルバンド。 L. A.のまばゆい陽光の下鳴らされるとろけるようなスウィートソウルが中心だが、どれもどこかやるせなく情けない。『インヒアレント・ヴァイス』的煙たいサイケデリック感覚とジャズからの影響も特徴的で1stアルバム『Buck』最終曲”Thank You”なんかはサン・ラがラスカルズの”Groovin”を演奏してるかのような得体の知れなさがなんとも魅力的だ。2021年リリースのニューソング”Bye Bye”はホワイトアルバムさながらの異常なまでにぐしゃっと中域にまとまったサウンドに「バイバーイ」のコーラスが頭にこびりつく大名曲。いま一番キテるのは彼らかも。

Holy Hive

オーセンティックな”いい曲”のオンパレードに見えて、アンサンブルの可能性をひたすらに模索しているようなスウィート・フォーキー・ソウル。これだけでずっと聴いていたくなるようなファルセットボーカルと、とにかくツボを押さえまくったHomer Steinweissのドラミングは最高の一言。あえて名前を出したのは、名だたるビッグネームのバックでも叩いてる事と、Daptonesの諸作品への参加も含め、Big Crownからのリリースに共通するドラムの”良さ”がただの過去への眼差しの焼き直しにならないところ。肝な部分だなと思います。

The Shacks

マルチプレイヤーMax Shragerとシンガー&ベーシストShannon Wiseによるニューヨークの2人組。クロディーヌ・ロンジェの如きミステリアスなヴォーカルの囁きとアメリカンクラシックなバンドサウンドはいつの時代でも「生まれる時代を間違えた」と嘆くティーンに希望を与えるのに充分すぎるサイケデリックな煌めき。アップルのCMに起用されたKinksの脱力カバー”The Strange Effect”も最高だが、気怠い夏のサウンドトラック第1位はこの曲だったはずのプールサイドレゲエ”Hands in Your Pocket”や『Dear Sunny…』収録の”Smile Now , Cry Later”のカバーに滲み出る浮世離れ感がこのバンド最大の魅力だろう。

Bobby Oroza

Big Crownの伊達男、ボビー・オローサはフィンランド生まれのソウルシンガー。レコードコレクションの宇宙から飛び出てきたようなヴィンテージサウンドはまさしくBig Crownな音だが、リヴァーヴのひとつとってみても異常な説得力を持って鳴る未来のローライダー・サウンド。これは真似事ではなくオリジナル、新しさよりもさらに新鮮なのです。常につきまとう甘くディープな哀愁は同郷のアキ・カウリスマキ映画のようでもあり(劇中でも使われた)クレイジー・ケンバンドのような風情まで滲み出る、『This  Love』はEarl Sweatshirtがサンプリング。

79.5

風通しのいいグッドミュージックにESGやPatrick Adams的なNYダンスミュージックの変異性を抽出して、ぽたぽたとスポイトで少しずつ垂らして作り出したような音楽。気怠げながら暗くならない軽やかさをもつキュートさが魅力。Big Crownからは様々なジャンルのリリースがありながら、ニューヨークの土着的なストリート感覚があり、新たな視点をもたらしてくれるような音楽が多く存在していて、映画や小説で目にしたような生活の一部を覗かせてくれるように思う。

Big Crown Records HP
https://bigcrownrecords.com/

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Buck / Brainstory

Buck / Brainstory [ Big Crown ]
2020

ケヴィン&トニーのマーティン兄弟とドラムのエリックによるカリフォルニア州出身の三人組。ぱっと聴きSoulやJazzといった様々な音楽の影響を受けていそうだが、そのどれとも言えない音。

音楽というのがSoul、Jazz、Funk、Rock、Folk etc..に象られたドーナツだと想像して、そのドーナツの穴から静かに溢れ出たような暗闇で煌めく音。それはpsychedelicであり、ここ10年程のこうしたグループに共通して見られる音だ。
特にBrainstoryの場合は、ケヴィンの歌声による遠い乾いた視線と、全体のほんのり明るい雰囲気が相まって醸し出す愛らしさがとても素晴らしい。そのバンドサウンドはひたすら趣味がよく、例えばA-3 「Sorry」 では、コズミックなシンセ音によるワンショットリフ、ヴィンテージリズムボックスのようなピッピコトコトコのドラムセクション、さらに脇からパウワウギターが品良く愛嬌を添え、それらが仲間のように連れ立って揺れ進んでいく。
そして歌。全ての感情を投げ出してしまった後に残ったものだけで紡がれたメロディラインは、結局のところ立ち上がってあてもなく歩き続けるしかない現実に直面している人々の背中をそっと後押しして、ぐっと勇気付けてくれる。

Sorry / Brainstory
部屋の壁にはJohn Coltrane / Blue Trainのポスター
BrainstoryによるJohn Coltrane / Impressionsのカバー