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Louis Wayne Moody High / V.A. [ Numero Group ]

Louis Wayne Moody High / V.A. [ Numero Group ]
2020.04

シカゴの超優良再発レーベル”Numero Group”からまたしても素晴らしいコンピレーションがリリース。『Louis Wayne Moody High』-架空のハイスクール「ルイ・ウェイン・ムーディ高校」の失われた1967年卒業年鑑をテーマに10代の失恋や夏の思い出が歌われるやせるなくも淡い哀愁を帯びたティーン・ガレージが14曲収録。

日本では”トワイライト・ガレージ”と表現されること多分ほとんどだと思いますが、米国のレコードフェアなんかではその手のシングル盤には”Moody”と書かれていてこちらの呼び名の方が一般的。所謂60年代のガレージ・バンドと比べるとフォーキーな楽曲が多く、間違ってもシャウトしないヴォーカル、マイナーキーの哀愁を感じるメロディやオルガンのフレーズ、さえない見た目(七三多めですね)、、、など様々な要素がありますがその極北とも言える作品といえば、The Rising Stormの『Calm Before…』。マサチューセッツの進学校に通うおぼっちゃま達が卒業記念に500枚製作した唯一のLPは繊細さとノスタルジー、自分達を橋の上から見下ろすアートワークさながらのアンリアルな感覚が同居した奇跡的な1枚。

そして今回リリースされる『Louis Wayne Moody High』はそんな黄昏ていて悲観的で物憂いなガレージ・ソングを14曲収録したコンピレーション・アルバム。ほとんどのアーティストがシングルのみを残した超マイナー・バンド。『Shutdown 66』『Teenage Shutdown vol.3』など過去にもトワイライト・ガレージの聖典ともいうべき作品はありましたが今作も同様に語られるべき素晴らしい内容。

トワイライトガレージの聖典 ” Shutdown 66 ” 卒業アルバム風ジャケット

The Rising Stormの再発も手掛けたArf! Arf!からリリースのコンピ「NO NO NO」にも収録の未練たらたらの失恋ガレージThe Invaders”I Was a Fool”、インディアナのガールズ・グル―プThe ShadesによるShangri-Lasライクな”Tell Me Not To Hurt”、13th Floor Elevatersで知られるTexasの名門レーベルInternational ArtistsからシングルもリリースしているThe Chaynsによるフォーキー・ガレージ”See it Though”、夏の終わり系メロディのソフト・サイケデリアThe Frost”Behind the Closed Doors of Her Mind” 、そして最後に収録されているThe Shy-Guysの”Goodbye to You”は数年前にYou Tubeで発見して以来、個人的Wantだった1枚で最高のバンド名とSummer Sounds級の完璧なルックス、謎のリヴァーヴがかかったスネアとじめっとしたオルガンがトワイライト好きのハートを射止めるナイスな1曲。

すでにストリーミングでの配信が始まりましたがNumeroのアナログ盤は毎回装丁が凝りまくり。今作もレーベルインフォでは卒業アルバムを模した革製の造りになっているみたいですし
おそらく詳細なブックレットもつくはず。当時メンバー写真や貴重なバイオグラフィを読みながらあらゆる妄想を膨らませて聴くことをおすすめします。

  1. $1,000,000 War Babies – Hey Little Boy
  2. The Invaders – I Was a Fool
  3. “D” and the Sugar Cane Factory -Fade Sun, Fade
  4. The Shades – Tell Me Not to Hurt
  5. The Werps – Voodoo Doll
  6. Female Species – Tale of My Lost Love
  7. Chayns – See It Through
  8. Yellow Hair – Somewhere
  9. The Islanders – King of the Surf
  10. The Fastells – So Much
  11. The Frost – Behind the Closed Doors of Her Mind
  12. Bob Kirk – Summer Winds
  13. The Weejuns Ready C’Mon Now
  14. The Shy Guys – Goodbye to You
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PLAYLIST

Forge Your Own Tapes – Vol.1 Stay Home Ambient

家にいるしかない日々が続くと分かった時は「たくさん音楽を聴こう」とか考えていたもののいざ始まってみると音楽なんて何も聴く気が起きなかった。改めて思い知ったけれど、聴く音楽は精神に作用するし精神は聴こうとする音楽を当たり前に選ぶ。そんな時にアンビエントは最適だった。最近の少し過剰なアンビエント・ブームにはちょっと距離を置いているつもりだったがここに収録されているようなクラシックな意匠を纏う曲達の魅力には抗えないものがある。

職場の臨時休業が決まり、明日からどうしようと漠然な不安とともに新宿から伽藍とした歌舞伎町を抜け中野まで歩いた。
その夜の長い散歩道で聴いた50曲。そのせいか自然と重くないフィーリングでポップなのものが多くなったと思う。非アンビエント的なものも多く、あくまで個人的なでフィーリングで選んだ。

アンビエント・ミュージックの入門編として、ステイホームのお供に、夜の住宅街の散歩道のサウンドトラックにもきっと最高です。


Brian Eno,Jon Hassellなどのパイオニア達はもちろん、Cluster, Conrad Schnitzlerなどのクラウト・ロック勢、そしてその影響をうけたWim Mertens,Durutti Columnなどクレプスキュール界隈の人たち。

Ho Renomo / Cluster & Eno

ギター音響的なところではさすらいのカウボーイ Bruce Langhorne, ブリティッシュ・フォークレジェンドの Mike Cooper のエキゾ・アンビエント、説明不要のParis,texasにあまりに美しいLoren Connorsの”Lullaby(the 1st)”。

PaumalMike Cooper
Lullaby (the 1st) / Loren Connors

近年この界隈の盛り上がりもあり素晴らしいリイシューがとにかくたくさんリリースされた、カナダのシンガー・ソングライターBeverly Glenn-Copelandの86年カセット・テープ音源は個人的に2019年良く聞いた1枚、アップル・コンピュータのソフトウェア開発にも携わった女流音楽家Laurie Spiegelの古典的名作「The Expanding Universe」、国内のアンビエント作品も再発が一気に進み吉村弘や広瀬豊などは多くの人が知るところに。

Old Melody / Beverly Glenn-Copeland

非アンビエントものではMiles Davis”In a Silent Way”のNew Mix,Alice Coltraneに師事したハープ奏者Jeff MajorsはLalaajiなどにも通じるMeditatedな世界観、昨年シカゴの再発レ―ベルNumeroからリリースのコンピ「You’re Not From Around Here」に収録されたギター・デュオHouston & DorseyはSanto & Johnny”Sleepwalk”にならぶフローティング・ギターものとしても最高。

Baby Dauhter (ICE 015) / Jeff Majors
Ebb Tide (HT #1) / Houston & Dorsey

90年代テクノからはAphex Twin,Boards of Canada、相当久しぶりに聞いたヴェクセル・ガーランドによるエレクトロ二カの名作「Wunder」。この4月に”Dear April””Cayendo”がリリースされたFrank Ocean作品に関わるDaniel AgedとBuddy Rossの2アーティストの楽曲もいまの気分にはぴったり。

Jones / Wunder
Running Around / Buddy Ross